2011/07/05
ボルドープリムール2010 試飲会/セミナー
昨年に続いて、今年もボルドープリムールの試飲会とセミナーに行ってきました。
■概要
株式会社 徳岡 主催 ボルドープリムール2010 試飲会/セミナー
日時:2011年7月5日(火) 13:00~17:00
場所:グランドハイアット東京 2階 バジル/セージ
参加費用:2000円
バジル:試飲会場
収容人数:45名~240名
セージ:セミナー会場
収容人数:25名~90名
■講師
◇ジャン・ギョーム・プラッツ氏
ドメーヌ・レイビエの最高経営責任者(CEO)
ドメーヌ・レイビエは、サンテステフのシャトー・コス・デストゥルネル、シャトー・マルビュゼ、グレを所有。
シャトー・コス・デストゥルネルを管理してきた一族の4代目。
◇ジャン・リュック・テュニュヴァン氏
シャトー・ヴァランドローのオーナー。
◇山本昭彦氏
ワインジャーナリスト。
◇徳岡 豊裕氏
株式会社 徳岡 代表取締役社長
■セミナー内容
<ジャン・ギョーム・プラッツ氏>
テュニュヴァンのワインはメドックに大きな影響を及ぼした。
91年のヴァランドローにショックを受け、メドックは身を奮い立たせた。
それから10年でボルドーは変化した。
地球温暖化は、好天に恵まれるという形で、ボルドーワインに影響している。
プリムールに参加する事で、資金を調達する事が出来、いろいろな技術に投資できる。
1960年代の収穫の際には、長靴と雨具を貸していた事が多い。
1990年以来、収穫時に雨が降ったことはない。今は帽子とTシャツ1枚を貸し出す事が多い。
畑での管理もしっかりしてきたので、ブドウも健康になり、ワインも若いうちから楽しめるようになった。
ブドウの凝縮度を高めるために、収穫量が減っている、それもワインの高騰につながっている。
コス・デストゥルネルがプリムールに参加するのはF1に参加することに似ている。
技術やメカニックとチャンスが必要で、勝利を得ることができる。
(ここはイマイチよく分からなかったんですよね。)
1855年の格付け以降、戦争などもあり、価格は乱高下した。
2000年以降、恵まれた気候が続き、世界的にも高い価格付けとなっている。
その中でも、2010年ビンテージは恵まれている。
コス・デストゥルネルの、シャトー以外でテイスティングは、今回のプリムール試飲会が初めて。
メドックの2010年はパワフルでフレッシュ。
7、8月は日照時間が長く、夜は温度が低かった。
クラシックで伝統的な、ボルドーらしい出来で、1959年に似ている。
前年の、2009年のコス・デストゥルネルはリッチで豊かだった。
2011年は例年より3週間から1ヶ月収穫が早い。
1893年以降最も早いと思う。
世紀のビンテージと言えるのではないか。
<ジャン・リュック・テュニュヴァン氏>
ヴァランドローはネゴシアンもやっている。
ヴァランドローは妻の名前と、ヴァレ(谷)から命名した。
妻が畑仕事をしているが、農家の出身なので非常に優秀である。
ネゴシアンとつくり手の両方をやっていると、いろいろと見えてくる。
2010年には驚かされた。素晴らしい。
昔は30年から40年に一度だったグレートビンテージが、最近は2年から3年おきにくる。
2010年は酸度が高く、タンニンが豊か。
すべてを兼ね備えている。
2009年は分かりやすく、アメリカ受けがいい。
アメリカは糖を重視し、ヨーロッパや日本は酸を好む傾向にある。
コス・デストゥルネルはメドックでも多くの人が訪れるシャトー。年間3万人。
自身で出向き、コス・デストゥルネルを飲んで第3の方向性がみえた。
1.ガレージワインのパワフルなタイプ
2.クラシックなエレガントなタイプ
3.パワフルでいて繊細、エレガント
ボルドーはナパと違い、毎年違い、毎年発見がある。
<山本昭彦氏>
2010年は、長期熟成に不可欠な酸が強いという事が特徴。
1959年もフレッシュなビンテージだったが、それに近い。
ボルドーは天候以外にも品質向上の努力をしてきた。
セカンド、サードラベルを設定し、ファーストラベルを減少させた、その分品質が向上している。
畑仕事も衛星を使って観測した区分けなど、最新の技術を用いている。
2010はロバート・パーカーも10銘柄に100点近い点をつけた。
フレッシュな酸と、巨大なタンニンが特徴。
最近では、2010、2009、2005が最も良い。
2010年は評価が良いので、価格もとんでなく上がっている。
シャトー・ラフィット・ロートシルト:600ユーロ
シャトー・オー・ブリオン:660ユーロ
シャトー・ラトゥール:780ユーロ
シャトー・コス・デストゥルネル:608ユーロ
日本もアメリカもヨーロッパも不景気だが、中国だけ元気が良く、ボルドーの価格を引き上げている。
香港のオークションは、ロンドンよりも熱く、古いワインも、新しいワインも、買いあさっている。
ブルゴーニュのオスピス・ド・ボーヌの事前試飲会が、北京、上海、香港で行われた。
今まで、日本では行われたことはない。
いかにボルドーもブルゴーニュも、中国市場に力をいれているかが分かる。
BRICsの他の国、ブラジルやロシアも高級ワインに目覚め始めている。
今後さらに高級ワインの価格高騰が予想される。
イギリスではワイン投資ファンドも活発になってきている。
ここ数十年でボルドーのワイン価格がとんでもなく上がっている。
シャトー・ムートン・ロートシルトの売り出し価格(シャトーからネゴシアンへの販売価格)の推移。
1982年:26ユーロ
1990年:31ユーロ
1995年:35ユーロ
2000年:120ユーロ
2005年:300ユーロ
2010年:600ユーロ
<徳岡 豊裕氏>
プリームール販売は、ボルドーワインの品質向上に貢献している。
1982年当時、各シャトーはお金が無く、シャトー・マルゴーでさえ経営困難だった。
出来たワインを市場に出る前に売る、プリムールを行うようになって資金繰りが楽になった。
今ではシャトーはお金持ちなので、プリムール販売は、ホントはやる必要がない。
徳岡は1988年にプリムールに参入したが、当時、シャトー・マルゴーは10ユーロもしなかった。
ただ、その分、品質も今よりは低かった。
5年前のシャトー・マルゴーを、今のパヴィヨン・ルージュ・デュ・シャトー・マルゴーは品質面で上回っている。
最近では、果実の選別の技術も向上し、センサーなどで完熟度を選別しセカンド用、サード用に振り分けている。
本当に良いぶどうだけがファーストラベルになる。
ファーストラベル、セカンドラベルの価格の違いは、ぶどう果実自体の品質の違いでもある。
そういう点でファーストとセカンドを飲み比べてみると、違いが良く分かる。
現在、シャトー・マルゴーは10万、パヴィヨン・ルージュ・デュ・シャトー・マルゴーは2万。
品質の差はあるが、セカンドラベルのコストパフォーマンスは大変高い。
■ボルドプリムール試飲会
それほど狭い会場では無かったのですが、時間帯によっては身動きがとれないくらいの大盛況。
ギャル風の若い女性から、かなり年配の男性まで、幅広い層が来場していました。
中には、強い香水をつけている女性もいて、ちょっと閉口しましたが、まあお祭りだと思えばしょうがないか。
去年よりも気さくなお祭り的な雰囲気で、楽しくてついつい飲み過ぎてしまいました。
プリムールとはいえ、どのワインも美味しかったです。
細かくメモはとっていませんが、記憶に残っているものをご紹介。
シャトー・ド・ヴァランドロー、ヴィルジニー・ド・ヴァランドロー、クロ バドンを飲み比べてみました。(なんて贅沢)
ファーストラベルの、シャトー・ド・ヴァランドローはグリーン香など少なく、濃厚でフルーティな味わい。
ヴィルジニー・ド・ヴァランドロー、クロ バドンは、杉やピーマンといったグリーン系の印象が強くなります。
完熟した良いブドウのみがファーストラベルのシャトー・ド・ヴァランドローに使われている、という事がよく分かりますが、味の好みはまた別なのかもしれません。
シャトー・コス・デストゥルネルは、テュニュヴァン氏の指摘通り、パワフルな中にもエレガントで優しい印象を感じました。
まあ先にそう言われていたからかもしれませんが・・・
力強さだけじゃなくて、メドック的な優雅さみたいなものを感じるんですよね。
数多くのグラン・クリュが並ぶ中で、印象に残ったのが、シャトー・モン・ペラ。
グラン・クリュではない事を逆手にとって?軽めのバランスで、もう飲めそうな感じに仕上がっていました。
普通に美味しかったですね。
メドックのグラン・クリュが多数ありましたが、グラスに少し注いで、順番に飲んでいっても、それほど大きな違いは感じられませんでしたね。
まだまだ荒っぽいものとか、すでに優しさが出ているものとか、ややグリーン香が強いものなど、細かい違いはありましたが、会場が混雑していてメモる余裕がありませんでした。
白ワインは今回少なめだったのですが、その中でも、ソーテルヌの貴腐ワイン、シャトー・ギローが美味しかった。
極甘なんですがフルーティさが心地良くて、とても爽やかな気分になりました。
プリムールで出品しているワインは、まだまだ若く、将来どんな味になるのかは、素人にはまったく読めませんが、日頃飲めないようなメジャーなシャトーを数多く飲めるという点では、とても意義のあるイベントだと思います。
楽しかったので、また来年も行きたいな~、って思いました。
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