日本ソムリエ協会関東支部 第4回例会セミナー「和食とワイン」に行ってきました。
開催日:2015年7月30日(木)
会 場:ホテル ニューオータニ ザ・メイン 宴会場階「芙蓉の間」
時 間:14:00~16:00(受付13:30~)
テーマ:「和食とワイン」
講 師:
高橋 拓児 氏 京料理 木乃婦三代目主人
田崎 真也 氏 (一社)日本ソムリエ協会 副会長
■会場は800名入る大会場
入り口では「和食とワイン」と「テイスティングは脳でする」の本を本日限定の「スタンプ付き」で販売。
800冊あったので、さすがにサインは厳しい、という判断で「スタンプ」になったようです。
いつのも大規模セミナーのさらに倍くらいのサイズの特大会場。
最初は500名定員でしたが、最終的に750名定員で、800名の応募があったとか。
関東支部だけで会員5000人いるそうですが、800名の応募というにはさすがに田崎さんですね。
本日のテーマは和食とワイン。
いつもと違ってグラスは3つと少なめで、小さなプラスチックの容器に薄口醤油と濃口醤油、コーヒー用スプーン、用途不明の空のデミタスカップも置いてあります。
ソムリエ協会機関紙で、田崎さんと髙橋さんの和食とワインについて連載していたとのことでしたが、すみません、ちゃんと読んでませんでした。
■世界文化遺産に登録された和食の特徴
・多様性、北海道から沖縄まで温度差は60℃あり気候も土壌も違う。
・健康的な食事 一汁三菜、味噌などの醗酵食品、バランスの良い食事。(塩分高めとは言われている)
・四季の変化に順応する 体長を整え対応する食事。
・年中行事 お正月のおせちから始まる 1月1日、3月3日、5月5日などの節句の伝統料理が特徴。
とされているようです。
ワインと合わせるにあたって
・肉より魚が中心
・おだしや野菜、しょうゆみりんにいかに合わせるか
がポイントになります。
■洋食と和食の比較
西洋料理のブイヨンは肉や骨のベースでアミノ酸が多い、ダシはさかながベースで、アミノ酸の種類が少ない。
和食だしに使われる昆布の旨み成分は、グルタミン酸、カツオの旨み成分はイノシン酸、だいたい4つくらいで構成されるが、洋食のブイヨンは14種類以上あり、複雑。
ダシは素材を活かすが、西洋料理はソーズが前面に出てソースが主役になる。
ダシの4つのアミノ酸は、素材のアミノ酸を際立たせる役目をする。
そのためには塩味が重要で、醤油やみりんはなるべく最低限で使いたい。
■お出汁のテイスティング
謎の空のデミタスカップはお出汁のテイスティング用でした!
香りを分析して欲しいとのことで、お出汁をテイスティング。
昆布とカツオ節だけど、かつお節は血合いの入ったもの。
昆布は60~70℃で1時間くらい、なるべく切らなくて長いものを使う。
細かく切ると、切り口からフコイダンが出てぬめりが出てしまう。
カツオは80~90℃くらいに一気に入れる。温度が低いと濁る。
大阪は厚めのかつお節で、京都は薄め。
お出汁は、マコンブのようなヨード香、血合いが入っていることで、鉄さびや金属、燻製の香り。
この血合いの香りは通常醤油でカバーする。
天つゆなどの濃い味付けのものにはこのようなダシが良い。
スモークフレーバーや金属などはワインの熟成香に通じる。
基本のダシには、ワインの熟成香がキーワードになる。
お出汁に合わせたのは、ブラン・ド・ノワールのシャンパーニュ。
ピノ・ノワール50%で、ピノ・ムニエ50%。
5年瓶内熟成していて、ドサージュは9g。
田崎さんコメントでは、スモークや焼いたパンの香り、ヘーゼルナッツ、ブリオッシュ、芳ばしい焼けた香り、ハチミツ、酸化香、ヨード香、熟成香などがあり、香りの構成が、ダシに似ているとのこと。
最近は「ヨード香」をポジティブは表現で使っているそうです。
■酸味がポイント
和食は、うま味と塩味が基本であまり酸味を使わない。
日本酒は同調するが、ワインは酸味があるので、そこがポイント。
■日本料理はデザートが発達しなかった
和食コースでデザートに甘いワインを合わせると、ただ甘いという反応になる。
日本では、苦いお茶のあてに甘いものを当てる。
お寿司のお茶は前のネタの風味を消すため。
■料理は酒の「あて」
日本酒に対しての料理は、お酒を飲ませる為にあり、食事は塩気があってお酒がすすむもの、酒の「あて」という考え方が伝統的。
対してワインは、食事に合わせることでソースになり、食事を完成させる考え方で、全然違う。
和食がこれだけ世界中で流行しているにも関わらず、日本酒と和食の定番の組み合わせ(定石)が存在しない。
伝統的な和食料理屋でも置いてある日本酒は数種類。
しかも価格的に釣り合いがとれるように大吟醸を当てる。
食事にホントに合うかどうかは考えられていない。
■醤油は5タイプ
薄口醤油、濃口醤油、白醤油、たまり、再仕込み醤油、の5タイプの醤油がある。
薄口醤油と濃口醤油はまったく別物。
薄口醤油はスパイス的、濃口醤油はフォン・ド・ヴォー的。
薄口醤油は素材の味を引き立てるように使い、濃い口はしっかりタレの味を出すために使う。
■キーワードはメイラード反応
薄口醤油と濃口醤油がカップで置いてあって、香りを確認。
キーワードは「メイラード反応」。
コーヒーの焙煎、醤油の色付き、シャンパーニュやマディラの色付きはメイラード反応。
シャンパーニュはドサージュの糖分がメイラード反応を起こして時間が経つと色づく。
■和食の調味料はシンプル
醤油、みりん、お酒が1:1:1のパターンが基本。
■和食には甘みが常にある
みりんは戦後から使われるようになった。
本みりんは以前は飲み物や薬だった。
和食には調味料で甘みを使うが、フランス料理では食中に甘いものはなく、ソースのフルーツくらい。
そのため、フランスは最後に甘いものやチーズでバランスを取る。
和食はずっと甘みがあるので、デザートが無く、最後に酢の物で締める。
和食は、ドイツの甘いワインや酒精強化ワインが合わせやすく、辛口ワインは合わせにくい。
甲州も昔の甘みのあって酸化したワインが合わせやすかったが、最近の辛口は合わせにくい。
■チーズと日本酒
チーズは日本酒との相性がいい
チーズは動物性タンパク質の醗酵食品、みそは植物性タンパク質の醗酵食品で、良く似ている。
■吸い口がワインの邪魔をする
和食は、「吸い口」がワインを合わせにくくしている。
何にでも木の芽やゆずなどを載せるので、素材ではなく、吸い口に味が引っ張られ、ワインが合わせにくい。
■刺し身とワイン
刺し身は和食でも上格のメニュー。
でも、つけるのは「わさび醤油」に決まっていて、さらに舟盛りなどは味の違う甘エビやまぐろなどが一気に出てきて、お酒と合わせる配慮がまったくない。
田崎さんは、自分でも釣りに行き、魚に合わせてつけダレも変えている。
舟盛りで出てきて好き勝手に食べられるとお酒との相性は破綻する。
せめて一品づつ出てきて欲しい。
刺し身には「煎り酒」が良い。
お酒にお塩と梅干しが基本だが、炒ったお米などのバリエーションがあり、お酒にも合わせやすい。
カツオはマスタードをつけると血の味を活かして合わせやすい。
田崎さん曰く、カツオにビールを合わせると「鉄さび」の味になってまったく合わない。
■お吸い物とワイン
お吸い物は、リースリング・リオンや甲州の瓶内醗酵のスパークリングなどが合うが、汁物は一気にいただくものなので、お酒との相性は考えなくても良い。
スープにワインをあわせないのと同じ。
先付けからのスパークリングワインの流れで良い。
■塩焼きとワイン
塩焼きはもっともワインに合わせやすく、魚の種類などでワインのタイプを選択する。
タレを付けるものは赤ワイン、味噌焼きはマロラクティック醗酵している白ワインなど。
白身の天ぷらはリースリング、エビはシャルドネが良い。
■全体の構成
和食は山が2つあるので、スパークリングが2回入るパターンで考えると面白い。
和食とワインの組み合わせを考えるように、日本酒と和食の組み合わせも考えていく必要がある。
■まとめ
何というか、あまりまとまらなかったような気がします。。。
そもそも和食の構成や味付け自体がお酒に合わせることを配慮していないので、食事を提供する方でもお酒との相性をもっと考えようよ、という提案が一番大きなテーマだったような。
それともう一つ、ソムリエはもっと日本酒の事を勉強して、各料理と日本酒のタイプの定石をこれから作って行こう、という投げかけもありましたね。
いろいろと考えさせられるセミナーでした。
和食とワインの本も買わないとですね!
■その他セミナー・試飲会の記事はこちら
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