日本ソムリエ協会関東支部 第1回例会セミナー「Château Haut Bailly テイスティングセミナー」
協力:Château Haut Bailly
開催日:2015年2月10日(火)
時間:14:00~16:00(受付13:30~)
会場:セルリアンタワー東急ホテル B2F「セルリアンタワーボールルーム」
テーマ:「Château Haut Bailly テイスティングセミナー」
講師:
ヴェロニック・サンデルス女史
Château Haut Bailly 醸造責任者兼 General Director
田崎 真也氏
日本ソムリエ協会 副会長
久しぶりのソムリエ協会のテイスティングセミナー。
関東支部長の、ロオジェ 中本 聡文ソムリエが入り口で出迎えてくれました。
いつも素敵な笑顔を、ありがとうございます。
会場は、セルリアンタワーボールルームで、スクール形式だと定員850名の大きなホール。
定員の400名を超えて、440名の申し込みがあったそうです。
世界的にはマスタークラスのテイスティングセミナーは20~50名くらいで行うらしいですが、日本で440名も集まる事を聞いて、シャトー・オー・バイィの社長ヴェロニク・サンデルス女史は驚いたそうです。
シャトーの知名度と田崎真也副会長の人気のおかげでしょうね。
ヴェロニク・サンデルス氏は、女性で初めてペサック・レオニャン協会の会長もやられたとのこと。
田崎真也副会長について、ボルドーに銅像を立ててもいいくらい貢献してくれていると感謝していました。
まずはボルドーとグラーヴについての説明から始まりました。
■グラーヴの特徴
栽培面積は約5000haで、ボルドー全体の4.5%。
ボルドー市はグラーヴにある。
コミューンは、ペサック・レオニャンのみ。
A.O.C.ペサック・レオニャンは1987年(1986年?)の制定された。
生産量の84%が赤で、16%が白。
クリュ・クラッセ・デ・グラーヴは16銘柄で、その中の順位は無く、赤と白が認められている。
◇◇◇ 赤のみの銘柄 ◇◇◇
Château Haut-Brion
(シャトー・オー・ブリオン)
Chateau de Fieuzal
(シャトー・ド・フューザル)
Château Haut Bailly
(シャトー・オー・バイィ)
Château La Mission-Haut-Brion
(シャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン)
Château La Tour Haut-Brion
(シャトー・ラ・トゥール・オー・ブリオン)
Château Pape Clément
(シャトー・パプ・クレマン)
Château Smith-Haut-Lafitte
(シャトー・スミス・オー・ラフィット)
◇◇◇ 赤と白が認められている銘柄 ◇◇◇
Château Bouscaut
(シャトー・ブスコー)
Château Carbonnieux
(シャトー・カルボニュー)
Domaine de Chevalier
(ドメーヌ・ド・シュヴァリエ)
Château Latour Martillac
(シャトー・ラトゥール・マルティヤック)
Château Malartic-Lagraviere
(シャトー・マラルティック・ラグラヴィエール)
Château Olivier
(シャトー・オリヴィエ)
◇◇◇ 白のみの銘柄 ◇◇◇
Château Couhins
(シャトー・クーアン)
Château Couhins-Lurton
(シャトー・クーアン・リュルトン)
Château Laville Haut Brion
(シャトー・ラ・ヴィーユ・オー・ブリオン)
Château La Tour Haut-Brion(シャトー・ラ・トゥール・オー・ブリオン)は2006年よりChâteau Haut-Brion(シャトー・オー・ブリオン)のセカンドラベルに、Château Laville Haut Brion(シャトー・ラ・ヴィーユ・オー・ブリオン)は2009年よりChâteau La Mission-Haut-Brion(シャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン)の白として、シャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン・ブランになりましたので、現在は14銘柄になっています。
■シャトー・オー・バイィについて
シャトー・オー・バイィは1461年の書物に記録があり、1000年くらい前からワインを造っている歴史のあるシャトー。
1630年から4世紀にわたって畑の面積が変わらず、30ヘクタールを1区画としてシャトーの周辺で所有しているのは、ボルドーの中では珍しいことだそうです。
1945年にベルギー出身のワイン愛好家、ダニエル・サンデルスにより、サンデルス一族が所有。
1998年にロベール・G・ヴィルメールに経営が変わりましたが、ヴェロニク・サンデルスはそのまま続けて残りました。
ハーモニー・調和を大事にし、人員構成も半分が女性だそうです。
畑での作業者についても半分を女性にしているとのことでした。
土壌は砂利質、ピレネーの第三期地層、小石と貝殻でミネラルが豊富。
30ヘクタールのうち、4ヘクタールは100~120年の古樹、リュット・レゾネで栽培されています。
4ヘクタールの古樹には、カルメネールやマルベックなども含まれていて、それらが微量ながらブレンドされているそうです。
セパージュ比率では、カベルネ・ソーヴィニヨンに含めているようです。
収穫は手摘みで2回選果、ブドウ畑で選果を行うそうです。
醸造はステンレスタンクと耐熱性コンクリートタンク、マロラクティック醗酵はバリック(小樽)で行います。
醸造期間:3週間
発酵温度:30℃
樽での熟成期間:16ヶ月
新樽の使用:50%
卵白による清澄処理
木樽のメーカーは7社あり、その年の一番良いものを使用。
セカンドワインは1967年から造っていて(他のシャトーは1980年くらいが多い)1980年台にはサードワインを造りはじめました。
セカンドワインは、La Parde Haut-Bailly(ラ・パルド・ド・オー・バイィ)。
ブドウはファースト用と同様で、違いは新樽の使用比率。
ファーストは50%で、セカンドは20%前後。
サードワインは、Château Le Pape(シャトー・ル・パプ)。
ファースト、セカンドと違って、メルロー主体です。
2004年より、ROSE DE HAUT-BAILLY(ロゼ・ド・オー・バイィ)もリリースしています。
セパージュは、カベルネ・ソーヴィニヨン50%、メルロー50%。
個人的にはとても飲んでみたいワインです。
調べると2500円くらいなんですね。
Henry Guillier’s book “Grands Vins de la Gironde Illustrés” ではボルドーの8大ワインに選ばれています。
ラフィット、ラ・トゥール、オーゾンヌ、オー・ブリオン、マルゴーなどに並んで、シャトー・オー・バイィがリストされています。
やはり、歴史のあるシャトーなんですね。
■ラ・パルド・ド・オー・バイィ 2012
2012年は冬は寒かったが、春は湿度が高く、「花振るい」や「結実不良」などの心配があった。
8月は非常に良い気候で、日中暑くて夜は涼しく、酸がしっかりついた。
収穫は、通常10日くらいで行うが、9月27日から10月15日と長くかかった。
カベルネ・ソーヴィニヨンは畑での作業での差が出る年。
<田崎真也氏コメント>
若々しい色調で、深みがある外観。
香りは、20%の新樽によるロースト香やヴァニラ、健全な果実の印象、チェリーやブラックベリー、華やかさがあって、野ばらやスミレのようなフローラル、健全な収穫を感じさせる、カベルネの印象。
味わいは、メルローのスムーズな印象があり、タンニンと木樽のロースト香、やわらかでなめらか、ビロードのようでシルキー、若い味わいで後半の酸がエレガントなフレッシュ。
味わいのバランスが良い、タンニンの成熟度がありなめらか、12年ビンテージにしてはレベルが高い。
1980年からサードワインを造っている影響も、セカンドラベルのバランスの高さにつながっている。
<ヴェロニック・サンデルス氏コメント>
3つのキーワード、パワフル、やわらか、エレガント、を大事にしている。
■ラ・パルド・ド・オー・バイィ 2011
2011年は難しかった年。
畑の作業によりクオリティに差が出るので、テイスティングをして買わないといけない年。
<田崎真也氏コメント>
外観は熟成が進んだ色調で、黒っぽく深みがある。
香りは、果物の印象と木樽がセパレートせずに調和がとれている。メルロー65%の湿った土のような印象が前面に出ている。
土、フルーツ、木樽のロースト香が一体になっている。
カベルネ・ソーヴィニヨンの、ローズマリーやタイム、ヒマラヤ杉の樹脂、などが爽やかな印象で、バランスの良さにつながっている。
味わいは、なめらかでエレガントな酸があり、果実の味わいと、シルキーでなめらかなタンニン、アフターに複雑なフレーヴァー。
2011年は早くから楽しめるので、もうレストランのリストに載せられる。
<ヴェロニック・サンデルス氏コメント>
シャトー・オー・バイィでは、メルローは早めに収穫しフレッシュ感を出す。
代わりに、カベルネ・ソーヴィニヨンはできるだけ遅く収穫し熟成を待つ。
リスクは高く、たとえ3%の果実をそれで失っても無駄にはならず、遅ければ遅いほどよいワインになる。
2012年と2011年ではキャラクターが違い、セパージュの比率も変えている。
2009年、2010年と偉大な年が続いたが、2011年、2012年は難しい年だった。
自然はどうにもならないが、シャトー・オー・バイィは恵まれたテロワールがあるので、コンスタントに高いレベルのワインが造ることが出来て悪い年はない。
■シャトー・オー・バイィ 2012
2012年は、カベルネ・ソーヴィニヨン60%、メルロー40%。
春先の天候不良により収穫は少なく、38hl/haしか収穫できなかった。
<田崎真也氏コメント>
外観は、若々しい紫がかった、深みのある色調。
香りは、まだクローズした印象で、空気に振れさせるというよりは時間を置かないと開いてこない印象。
複雑性があり、グランヴァンにある重く沈んだ印象。
新樽比率60%はセカンドワインの3倍だが、他の香りにマスキングされている。
果実やスパイス、カベルネ・ソーヴィニヨンのメントール、木樽のヴァニラ、ナツメグ、シナモンなどが調和している。
味わいは、果実味があり、フレッシュな酸が広がる、タンニンが中盤から後半にかけて収斂性を与える。
カベルネ・ソーヴィニヨンは小石のある土壌で、日中の熱を蓄えて暖かい土壌が向いている、メルローは粘土質で冷たい土壌が向いている。
日中の熱を蓄える土壌で育ったカベルネ・ソーヴィニヨンは、スパイシーでタンニンが豊富になる。
2012年はカベルネ・ソーヴィニヨンのポテンシャルを感じる、長期熟成型のワイン。
■シャトー・オー・バイィ 2011
2011年は、カベルネ・ソーヴィニヨン50%、メルロー47%、カベルネ・フラン3%。
<田崎真也氏コメント>
香りはまだクローズしているが、2011年はメルローのキャラクターが強い。最初の印象はメルローで、果実と土のイメージで、もう少し熟成が進めば腐葉土の印象が出てくる。
新樽での18ヶ月の熟成は前面に出ていない。
味わいは、セカンドワインと同じ構成ながら、ストラクチャーがアップしている印象。
ふくよかで、まろやか、2012とは違う。
2012は酸味がありフレッシュ、存在感がある。
2011は酸味やタンニンが溶けこんで、果実のふくよかさと同調している。
2011は早くから楽しめて、2012年は少し寝かせるタイプ。
■シャトー・オー・バイィ 2008
ピュアで繊細な素晴らしい出来。
開花時期は難しい天候、7月は恵まれた夏、8月は冷涼、9月10月は最高の天候で、収穫は長くかかり、9月25日から10月23日までかかった。
この年にヴェロニック・サンデルスさんのお子様が産まれたそうです。おめでとうございます。
36hl/haの収穫量。
カベルネ・ソーヴィニヨン70%で、メルローが30%。
左岸のカベルネ・ソーヴィニヨンの特徴がよく出た年で、遅く収穫されたカベルネ・ソーヴィニヨンは左岸のクラシックな特徴を出す。
<田崎真也氏コメント>
外観は、若々しく深みのある色調。
香りは、複雑でエレガント、余韻も長い。
フルーティでスパイシー、樹脂やメントールを果実がくるむようなまとまり、木樽のキャラクターは取り込まれてまだ閉じている。
香りは、熟成の進み具合によって強弱が出るが、これから強くなる少し手前にある。これから徐々に強くなっていく。
味わいは、酸味が特徴的で、数字的には2011年の方が多いが2008年の方が酸を強く感じる。
タンニンやスパイスと同調していて、フレッシュで複雑、長期熟成型の熟したカベルネ・ソーヴィニヨンの印象で、トリュフやキノコにつながっていく、2011年とも2012年とも違うキャラクター。
<個人的な感想>
個人的にとっても美味しく、なめらかでエレガント、とても飲みやすかったです。
<ヴェロニック・サンデルス氏コメント>
シャトー・オー・バイィでは酸は脊髄のようなものと考えている。
1900年のビンテージを複数の銘柄で開ける機会があったが、シャトー・オー・バイィが最も美味しかったという評価だった。
■シャトー・オー・バイィ 2007
カベルネ・ソーヴィニヨン70%、メルロー26%、カベルネ・フラン4%
<田崎真也氏コメント>
スッキリしたなめらかな果実感で、口にふくんだ瞬間に美味しいと感じるワイン。
エレガントでフレッシュ、タンニンのアグレッシブさはなく、溶け込んでいる。
ボルドーは食事と合わせることを重要視し、飲み飽きないワインを目指しているが、2007年はまさに今が飲み頃。
ビンテージチャートでは2007年は敬遠されてしまうが、オフビンテージで手頃な価格で手に入る。
生産者の資質を知るには良い年。
畑での作業、選定・選果などのブドウのコンディションで左右されるので、テイスティングして買わなくてはならない年。
<個人的な感想>
この日飲んだワインの中で一番美味しかったのが2007年でした。
買ってみてもいいかな~って思ったけど、調べると10,000円以上もするのでちょっと手が届かないかも。
■2013年、2014年ビンテージについて
2013年は非常に難しい年だった。
冬が寒くて雨が多く、夏は良かったが、9月10月が湿度が高く暑く、灰色かび病のリスクがあった。
収穫量は少なく、2000ケースのみ生産。
良いブドウだけを選定したので、品質には問題ない。
2014年は、冬が良く、春も良く、夏はあまり良くなかったが、9月に気温が高く、年間通じて良い年だった。
しっかり成熟したブドウを収穫し、フレッシュでピュア、パワフルなワインが期待できる。
期待出来る年になる。
■総評
やはり田崎真也氏のコメントはとても勉強になりますね。
日頃飲めないグラン・クリュの垂直テイスティングも出来る貴重な機会です。
シャトー・オー・バイィも、今まであまり馴染みのない銘柄でしたが、2007年などは今まさに美味しくて、ファンになりました。
たまには良いワインをじっくり飲みたいものです。。。
ソムリエ協会関東支部では、またこのようなセミナーを開催する予定があるそうなので、次回も是非とも参加したいと思います。
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