2015/05/30
はじめてのワイン法 蛯原 健介 (著)
はじめてのワイン法
蛯原 健介 (著)
単行本: 367ページ
出版社: 虹有社 (2014/9/5)
発売日: 2014/9/5
商品パッケージの寸法: 18.8 x 13 x 2.6 cm
ワインエキスパート試験の中でも覚えるのが難しいワイン法ですが、この本は法律が制定されるまでの歴史や背景などが丁寧に書かれていて、とてもワイン法に興味を持たせてくれます。
ヨーロッパのワイン法は、昔から今の形で存在しているような印象がありますが、現在のワイン法になるまでには、暴動や流血、さまざまな利権関係などが影響していることが分かりますね。
どんだけ細かいんだよ、ってところまでワイン法で定められているのが、具体的な事例で紹介されています。
それに対して、日本のワイン法の不備と、その歴史的な背景、ワイン法が整備されていないことで世界に日本のワインが認めらなかった事なども丁寧に解説されています。
ただ現在は、山梨のワインをEU諸国に向けて本格的に輸出する段階になって法的障壁が明らかになり、甲州やマスカット・ベーリーAのOIV(国際ブドウ・ワイン機構)への登録、国税庁長官による地理的表示「山梨」の指定が行われ、対策が取られるようになりました。
日本のワイン法もその実現に一歩進みだしたと、筆者は語っています。
分厚い本(367ページ)なので一回読んでも10%も頭に入らないかもしれませんが、何度も読み直すとその都度新しい発見があるタイプの本ですね。
ワインエキスパートを受けようと思っている人にはおすすめの一冊です。
<本書のトピック>
ワイン法の最低限の事項は「ワインの定義」「原産地呼称」「ラベル表示のルール」。
近代以前のヨーロッパでは、ワインは水に替わる必需品で、重要な財産だったため法律の整備が必要だった。
古代エジプト時代に原産地呼称制度の原型があった。
パリ近郊にワイン産地が無いのは「20リユ規制」があったため。
19世紀以前の法規制は利権を守るための上からの規制、1860年代後半のフィロキセラ禍以降はワインの品質と産地表示の守るために変わった。
EUワイン法は、加盟国法に優位する。
AOP(保護原産地呼称ワイン)は、「原産地」の「呼称」を「保護」されたワイン。
IGP(保護地理的表示ワイン)は、「地理的表示」を「保護」されたワイン。
EUワイン法では適応される「ブドウ生産物」を17品目定めている。
1.ワイン 2.発酵中のワイン 3.ヴァン・ド・リクール 4.ヴァン・ムスー 5.優良ヴァン・ムスー 6.芳香性優良ヴァン・ムスー 7.炭酸ガス添加ヴァン・ムスー 8.ヴァン・ペテイアン 9.炭酸ガス添加ヴァン・ペテイアン 10.ブドウ果汁 11.部分醗酵ブドウ果汁 12.乾燥ブドウ由来の部分醗酵ブドウ果汁 13.濃縮ブドウ果汁 14.濃縮ブドウ調整果汁 15.乾燥ブドウ原料ワイン 16.過熟ブドウ原料ワイン 17.ワインビネガー
EUワイン法のワインとは「破砕された、もしくは破砕されていない新鮮なブドウ、またはブドウ果汁を部分的または完全にアルコール発酵させて生産されたもの」。
AOPワインは官能審査が義務、IGPワインは任意。
保護されるためには「生産基準書」の作成が必要。
ボルドーの格付の対象は醸造所、ブルゴーニュの格付の対象は原産地呼称と結びついている畑。
EUではショ糖による「補糖」が条件付きで認められている。
条件付きで「補酸」「除酸」も認められているが、「補糖」との併用は認められない。
「シャトー」「クロ」のラベル表示は、AOPに属するフランスのワインのみ表示可能。
EUワイン法は、特定の瓶の形状も使用条件を定めている。
近年EU産ワインの状況は厳しく思い切った減反政策を行ったが、ラングドック・ルーシヨンの減反希望が多く、ニューワールドとの競争で苦境にあることを示した。
減反で最も減ったブドウ品種は、「カリニャン」。
日本の酒税法ではワインは「果実酒」「甘味果実酒」に分類されるが、果実に含有される糖類の総量を超える補糖を行っても「甘味果実酒」として表示出来る。
大量の補糖はEUの基準に合わないため、輸出する場合は、EUワイン法の基準に適合していることを証明する必要がある。
国際的に認められていない水の添加や乾燥ブドウの使用も、日本の「果実酒」は認められている。
日本のワイナリーは農地法により農地の所有が規制されていたため「買いブドウ」を使用していたが、農地法改正により自社畑を持つことが出来るようになった。
「長野県原産地呼称管理制度」は長野の産地名は保護されていない、唯一「山梨」だけ「地理的表示」に指定され、保護される。
ワイン市場はグローバル化していて、国際基準に適合したワイン造りのルールが求められている。日本でもワイン法の整備は避ける事ができない。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
閲覧数の多い記事
-
ワインのテイスティングの際に、グラスを回す事をスワリングといいます。 グラスを回す方向も、時計回りと反時計回りでいろいろ薀蓄があるようです。 一般的には自分の方向に回す、反時計回りでスワリングするのが良いとされているようです。 万が一ワインが飛び出しても、対面の人にかからないとい...
-
ルイ・ド・ボーモン シャブリ 2014 Louis de Beaumont Chablis 2014 フランス:ブルゴーニュ地方:A.O.C.シャブリ アルコール度:12.5% ブドウ品種:シャルドネ OKストアで、税抜き1392円で購入。 【外観】 清澄度:...
-
ジョルジュ・デュブッフ ボージョレ・ヌーヴォー 2021 Georges Duboeuf Beaujolais nouveau 2021 フランス:ブルゴーニュ地方:A.O.C.ボージョレ アルコール度:12.5% ブドウ品種:ガメイ 外観は、紫がかった鮮やかな色調で、底がしっか...
-
いままで、ワインは飲みきってしまうことが多く、余ったら料理用にして、ワインの保存はあまり気にしていませんでした。 でも最近、年齢とともにワインが多めに残るようになってきたので、ワイン保存のパイオニア、「バキュバン」を購入。 で、ホントに効果があるのか、早速テストしてみました...
-
初歩からわかる 日本酒入門―きき酒師が本気で選んだ、本当においしい日本酒82種がわかる (主婦の友ベストBOOKS) を参考にして、日本酒用のテイスティングシートを作成しました。 ワインのテイスティングシート は呼称資格認定試験の勉強用ですが、この日本酒テイスティングシート...
0 件のコメント:
コメントを投稿