日本ソムリエ協会 平成22年度関東支部第2回分科会 ワインアドバイザー・ワインエキスパートフォローアップセミナー
日時:2010年6月19日(土)14:30~16:30
場所:日本ソムリエ協会ビル 3階会議室
講師:銀座レカン ソムリエ 大越基裕氏
会費:5500円(ソムリエ協会会員)
テーマ:ブルゴーニュに見るテロワール概論
前年にひきつづき、2回目のフォローアップセミナー。
全3回ありますが、私が申込んだのはこの1回だけ。
来年は全回申込もうかな。
■大越基裕(おおこしもとひろ)氏について
銀座レカンのシェフ・ソムリエ。
イケメンです。
カッコいいので名前が知られているのかと思いきや、とても真摯にワインの事を勉強していて、努力家です。
受講する前の印象と、実際に講義を受講してからの印象はガラッと変わりました。
フランスに渡って勉強していた年数も長いですが、ワインの醸造とぶどう栽培の勉強をしていたそうです。
さすがにベースがしっかりしています。
■テロワールとは
神の雫ですっかり有名になりましたが、天候、地質や土壌、人の3つが揃ってテロワールと言われます。
ブルゴーニュのテロワールを理解するために、人のファクターは取り除いた、「地」と「天」を中心に講義が行われました。
■地質・土壌・地形・気候
テロワールの概念は「地質」「土壌」「地形」「気候」の4つの要素で構成されます。
「地質」は「土壌」に影響を与えます。
「気候」は「地質」と「土壌」に影響を与えます。
「地形」は「土壌」と「気候」に影響を与えます。
なかなか、分かりにくいと思いますので、私なりに解説してみると。
<地質>
古代から堆積された地層の事ですね。それぞれの時代で、堆積されている成分が違います。
<土壌>
現在時点で表層に出ている地質と関係します。
土地は、隆起・風化・侵食などにより、表層の地層は地域、畑によって細かく違います。
また地形により、粘土層は水に流れやすいので扇状地にたまりやすく、斜面には残らない、などの影響があります。
<地形>
斜面は日照時間が長い、というのは一番分かりやすい地形がテロワールに与える影響ですが、丘の間の谷などは風が抜けて、温度が下がりブドウが成熟しにくい、などの影響もあります。
また土壌に対しても、斜面の土は雨で流れやすいなどの影響を与えます。
<気候>
土壌に対しては、現時点での影響と、過去の気候が地質に与えた影響というもあります。
■ブルゴーニュの土壌分布
ブルゴーニュは主にジュラ紀の地質時代区分の土壌が広がっています。
<コート・ド・ニュイ>
ジュラ紀中期
・バショシアン
・バトニアン
<コート・ド・ボーヌ>
ジュラ紀中期
・バトニアン
・カロヴィアン
ジュラ紀後期
・オクスフォーグィアン
<シャブリ>
ジュラ紀後期
・キンメリッジアン
・ポートランディアン
シャブリのキンメリッジアンは有名ですね。
この土壌の違いによって、コート・ド・ニュイでは、ピノ・ノワール、コート・ド・ボーヌではシャルドネが多く栽培されています。
ちなみに、シャブリのプルミエ・クリュとグラン・クリュはほぼ、キンメリッジアン土壌です。
■シャサーニュ・モンラッシェとピュリニー・モンラッシェ
シャサーニュ・モンラッシェとピュリニー・モンラッシェでは、畝の方向が90度違うそうです。
これは地形によるもので、それにより味わいも大きく違ってきます。
シャサーニュ・モンラッシェは、フルボディでリッチ。
ピュリニー・モンラッシェは、凛とした力強さと持っています。
シャサーニュ・モンラッシェは小石が多く、これが熱を保有し、夜間まで地熱を下げず、それがワインに柔らかさを与えて、味わいがしっかりとしてくる、とのこと。
ブラインドで飲んでも分かりませんが、比較して飲むときっと分かるのでしょう。
ちなみに、シャサーニュ・モンラッシェの方が有名な造り手が多く、コント・ラフォン、ドメーヌ・ルフレーヴ、DRCなどがあります。
■粘土石灰質、泥灰土、石灰質
どれも炭酸カルシウムを含んでいる土壌です。
0~30%くらいを、粘土石灰質。
30%~60%くらいと、泥灰土。
60%~100%を、石灰質と呼んでいるようです。
特に泥灰土(でいかいど)は、マルヌと呼ばれ、コート・ド・ボーヌに多くみられます。
■テイスティングワイン
(1)
オークセイ・デュレス2007 バンジャマン・ルルー
Auxey Duresse 2007 Benjamin Leroux
輸入元:テレヴェール
参考価格:5600円
スマートで引き締まった味わい。
ミネラリーであるが、固い引き締まった小石のような印象。
フルーツは、レモンやライム。
シダー系のグリーン香。
(2)
シャサーニュ・モンラッシェ2007 フィリップ・コラン
Chassagne Montrachet 2007 Philippe Colin
輸入元:ファインズ
参考価格:6700円
ミネラリーだが、(1)とは違い、柔らかい石灰のような印象。
優しい味わいで、温かさを感じる。
カリンや洋なしのフルーツ香。
熟した印象。
2007年は酸がよく伸びるクラシックな味わいの年。
オークセイ・デュレスは固い凛とした酸がポイント。
シャサーニュ・モンラッシェは、やわらかくボリューミーでアタックが柔らかい。
(3)
ジュヴレ・シャンベルタン シャン・シェリニー 2006 ジョセフ・ロティ
Givrey Chambertin Champs Cheny 2006 Joseph Roty
輸入業者:AMZ
参考価格:7600円
軽いタイプ。
赤いフルーツ、フランボワーズなど。
甘いニュアンスがあり、コンポートされた果実の印象。
チャーミングでなめらか。
タンニンは重くない。
酸のバランスが良く、クラシックな傾向。
青い感じが無く、酸が強くないのは、ブドウの熟成がしかりしている事を表している。
オリエンタルスパイスの香り。
収斂性が味を引き締める。
(4)
ジュヴレ・シャンベルタン プルミエ・クリュ レ・コルボー ドミニク・ローラン
Givrey Chambertin 1er cru Les Corbeaux Dominique Laurent
輸入業者:合同酒精
参考価格:6800円
ドミニク・ローランは、酸化防止剤を極力少なく使う生産者。
2007年だとまだ刺激臭がある場合が多いが、このワインは少ない。
黒系果実。ガーネット色。
ブラック・チェリーやブルー・ベリーで、フレッシュな印象。
樽の影響で、アニスのようなオリエンタルスパイス香がある。
酸とタンニンが一体感を出している。
プルミエ・クリュクラスになると、ワインに一貫性を求められる。
■テイスティングのコツ
アタックからアフターの、酸やタンニンの出る位置でワインをテイスティングすると、個性をつかみやすいそうです。
ピノ・ノワールは最初から最後まで酸が続く事が多く、シラーは最初に甘さがきて、あとから酸が出てくる、といった違いがあるそうです。
確かに、最初に感じるのが、甘さなのか、酸なのか、タンニンなのか、また最後に残るのは何なのか、というのは、テイスティングの際のポイントになりそうですね。
■大越基裕氏への質問
最近気になっている、オーガニックについて聞いてみました。
<質問>
テロワールとオーガニックの関係は?
<答え>
テロワールを表現するのに、オーガニックやビオロジックは有効な手法だと思う。
・・・
<質問>
ビオワインは美味しい?
<答え>
テロワールを反映した良いブドウが出来ても、良いワインになるとは限らない。
でも良い生産者はいる。
個人的にはビオワインは大好き。
・・・
<質問>
今後オーガニックが主流になるか?
<答え>
大手の生産者が、オーガニックやビオロジックを取り入れる事は難しく、主流になることは無いだろう。
■まとめ
大変タメになるセミナーでした。
大越基裕さんもカッコよかったしね。
また同じテーブルのみなさんとも楽しいひとときが過ごせました。
また行きたいですね。
トップソムリエと直接お話が出来て、日ごろ飲めない上質なワインが飲めるという点では、会費の5500円は安いと思います。
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