2012/09/03

日本酒の基礎から学ぶテイスティングセミナー 日本ソムリエ協会関東支部 第4回例会セミナー

日本ソムリエ協会関東支部の第4回例会セミナー「日本酒の基礎から学ぶテイスティングセミナー」に参加してきました。

【開催日時】
平成24年9月3日(月)14:00~16:00

【会場】
横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ 4階 宴会場「清流」

【講師】
宮坂 直孝 氏
宮坂醸造(株) 代表取締役社長


今年のソムリエ協会は、日本のワインや酒類を見直す、というテーマで活動をしているそうです。
来年3月に、日本で世界ソムリエ選手権があり、世界のトップソムリエやワイン関係者が日本に大勢来るので、その時に日本のワインや酒類をきちんとアピール出来るように、という理由があるようですね。


■真澄とは?

長野県諏訪市にある創業350年の蔵元、宮坂醸造株式会社のメインブランドの清酒が「真澄」です。
吟醸酒用および普通醸造用に適する「協会7号」酵母の発祥の蔵であり、協会7号酵母は全国の70%の清酒メーカーで使われています。
海外展開も積極的に行い、世界最大の酒の見本市「Vinexpo(ヴィネクスポ)」などにも出展しています。


■海外で人気のある日本酒

真澄の出荷比率は、北米が30%、アジアが40%、ヨーロッパが15%。
ただ売るのではなく、海外のパートナーと組んで、レストランなどで、日本酒のセミナーを行い、啓蒙活動を続けているいます。
日本酒の製造工程は複雑なので、簡単に5ステップで説明し、必ずテイスティングを行います。
日本酒はデリケートなので、海外で品質を守るのが難しく、管理出来ないスーパーなどには売らないそうです。
これからは伸びるのはアジア、ヨーロッパは売り上げは少ないが、質を問われる重要な市場と考えています。

■日本酒とワインの造り方の違い

果実ベースの醸造酒は果汁の糖分をアルコールにすればいいが、穀類ベースの醸造酒はデンプンを糖分に変えてから、アルコールにするステップがあります。
特に日本酒は、糖化を醗酵が同時に進行するのが特徴です。

■複雑で分かりにくい日本酒の分類

純米酒、大吟醸、生酒、いろいろあって分かりにくい日本酒の分類ですが、基本は4つの分類基準です。

<原材料>
アルコールを添加しない:純米酒
アルコールを添加する:本醸造、アルコール添加酒

<精米歩合>
49%以下:大吟醸酒
50~59%:吟醸酒
60%以上:普通種

<加熱処理>
加熱処理を全くしない:生酒
加熱処理1回:生詰酒、生貯蔵酒
加熱処理2回:その他

<加水>
加水(割り水)しない:原酒
加水(割り水)する:その他

■お米を削るわけ

お米のタンパク質や脂質を取り除き、純粋なデンプン質だけにする意味があるようです。

■テイスティング

(1)みやさか やわらか純米 55
分類:純米
米の品種:美山錦、山田錦
精米歩合:55%
酵母:9号系、7号系
アルコール分:12度
日本酒度:-5前後
酸度:1.3前後
アミノ酸度:1.0前後

アルコール度12度の日本酒。
ランチではほとんど日本酒は飲まれなくなり、ワイン程度にアルコール度が低いものを造って欲しいという要望から生まれた。
飲食店で人気があり、これから主流になるかもしれない。
ただ水で薄めればいいというものではなく、原酒の段階でバランスをとるために工夫している。

(2)真澄 純米吟醸 辛口生一本
分類:純米吟醸
米の品種:美山錦、山田錦
精米歩合:55%
酵母:9号系
アルコール分:15度
日本酒度:+6前後
酸度:1.3前後
アミノ酸度:1.0前後

真澄で一番売れている辛口。
日本酒の基礎をしっかり抑えている。
フルーティさや甘みが無く、辛口。
毎年工夫して改善していて、この日本酒が真澄の評価になる。

(3)真澄 純米大吟醸 七號
分類:純米大吟醸
米の品種:美山錦
精米歩合:45%
酵母:7号系
アルコール分:16度
日本酒度:-1前後
酸度:1.7前後
アミノ酸度:1.3前後

山廃仕込みで7號酵母を使い、米は山田錦ではなく、長野産の美山錦を使っている。
真澄らしさやテロワールを意識している。
フワラリィ(フローラル)の香りを強く出す酵母があるが、この日本酒は違い、穏やかな印象。
酸がキレイなため、ヨーロッパでも人気がある。
日本酒を飲んでないソムリエも酸をブリッジで入っていけるためである。
あまり香りが強い大吟醸は食事には合わせにくい。
山廃仕込みは、味に深みと酸が出るのが特徴。

<山廃とは>
酒母の温度を上げたり下げたりして、雑菌の繁殖をふせぐ。
熱湯を入れた木樽を酒母に入れてかき混ぜる、一定の温度になると取り出す。
ノコギリの歯のような温度変化。
今は醸造用の乳酸を入れて雑菌の繁殖を防ぐが、昔はこの方法で乳酸を発生させていた。
温度変化の間に、いろいろな酒母の中でいろいろな菌が戦い、味に深みが出る。

(4)純米吟醸 浦霞 禅
分類:純米吟醸
米の品種:トヨニシキ、山田錦
精米歩合:50%
酵母:自家酵母
アルコール分:15度以上16度未満
日本酒度:+1.0~+2.0
酸度:1.3
アミノ酸度:1.2

やわらかい米の味。
特異な香りは無く、スタンダードで、お刺身が美味しくなりそうなタイプ。
後味は辛く、日本酒らしい味わい。

(5)月の桂 大極上 中汲 にごり酒
分類:純米酒(活性にごり酒)
米の品種:五百万石
精米歩合:55%
酵母:協会901
アルコール分:17.2%
日本酒度:+3
酸度:1.7
アミノ酸度:1.4

にごり酒は、特徴がはっきりしているので海外で人気がある。
実際にはもう少し甘いものが人気。
にごり酒は専用の瓶詰めラインが必要で管理も大変。
小規模の清酒メーカーではなかなか難しい。

■感想

一時期、ワインのようなフルーティな日本酒が話題になったことがありましたが、結局主流にはなりませんでしたね。

今回特に、日本酒には日本酒らしい香りがあると再認識しました。
爽やかさがあって、それはフルーツではなく、清々しい大気の香りとでもいうか、自然をイメージさせる香りなんですよね。

アルコール度12度の日本酒は、これはあり、と思いました。
しっかりした日本酒と飲み比べると頼りない感じですが、普通の家庭の食事に合わせるなら、これくらいがちょうどいいのではないでしょうか。
10度を下回るとバランスをとるのが大変だ、と言っていたが、確かに12度で軽さの限界のような印象です。

一番美味しかったのは、真澄 純米大吟醸 七號。
とても香りが良くて、味わいも酸がキリッとしまった印象で、キレイな空気感を持っている日本酒でした。

日本酒の文化を守り、世界に発信していくアイデアとアクションを持っている社長と、有能な海外担当で、「真澄」はこれからもどんどん伸びるでしょうね。

こういう熱意のある日本酒メーカーが伝統文化を守ってくれているのはとても心強く感じました。

私もワインばっかりじゃなくて、日本酒も飲むようにしよう・・

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